Column

2021年6月30日
戦慄のローランギャロス


冴えない朝、
大谷のホームランで
目を覚ます(字余り)。

スゴイとか通り越して、
笑っちゃうくらいですね。


さてさて、
オリ・パラまであと数週間。

開催の是非を問うつもりは
ありませんが、
気の毒なのは代表選手です。

せっかくの自国開催なのに
国民が開催を歓迎していない状況は
メンタル的にキツいでしょう。

延期・中止も気の毒、
開催されても気の毒です。

すべてをかけて辿り着いた晴れの舞台。
そこに歓声と熱気がないわけですから。

でもやっぱりスポーツはいいですね。

コロナ禍での憂鬱な気持ちも
だいぶスポーツに救われています。

二刀流の大谷はもちろん
軽量級でありながら
ボディブローでダウンを奪う
ボクシングの井上など、
その圧倒的なパフォーマンスは
爽快で痛快です。

それでも個人的にいまもっとも
リスペクトするアスリートは
ジョコビッチかな(またですか!)。

ジョコビッチの話の前に、
なんで私はこんなにテニスに
ハマっているのでしょう。
競技経験ゼロなのに。

錦織がトップランキングに入るような
活躍がはじまってから
拍車がかかったのは事実ですが、
小中学生時代から
よくテニス中継を観ていました。

マッケンロー、ボルグ、ビランデル、
コナーズ、ベッカー、エドバーグ
レンドル、ナブラチロワ、
クリスエバート、オースチン、
バセット、マンドリコワ…

どんなプレイスタイルだったか
結構鮮明に覚えています。

たぶんアニメ「エースをねらえ!」の
影響が大きかったのかな。

主役の岡ひろみでもお蝶夫人でもなく、
岡の親友「愛川マキ」の
ファンだったあたりが
私の偏屈さでもありますが…。

このアニメの主題歌の冒頭に
こんなフレーズがあります。

コートでは誰でも一人、一人きり。
私の愛も私の苦しみも
誰も分かってくれない。

テニスの本質が
この3行に集約されています。

5セットマッチの場合、
4〜5時間のロングマッチになることも 多々あるのですが、
試合中は、コーチングスタッフを含め、
誰一人として助言の一つも
求めることができない
ルールになっているのです。

1対1の競技ですからね(シングルスの場合)。
相手との戦い以上に自分との戦いです。

ミスをしたり、不運が重なったり、
相手の調子が良かったり、
自分の体が重かったり等々で
人間ですからイライラしたり、
焦ったりするものです。

イライラしたり焦ったりするほど
プレーが単調になり、
さらにペースを乱していくもの。
自力で立て直していくしかないのです。

ここでジョコビッチです。

気持ちの切り替え方はもちろん
精神力、戦闘力、集中力、
勝利への執念…
総じてメンタルというのでしょうが、
現役アスリートでは彼が一番ではないでしょうか。

もちろんそれを支えるフィジカルや
テクニックがあっての話ですが。

全仏オープンの彼を観た時は
感動とか興奮を超えて、
恐怖さえ感じました。
戦慄が走りましたね。

極上のスポーツドキュメンタリー映画に
ホラーのエッセンスまで加わった
感じでした。

4回戦の相手は新進気鋭のムゼッティ。
怖い物なしの若さとイケイケの勢いで、
ジョコビッチから2セット連取。

ジョコビッチはどうもリズムが合わず、
「さすがに今日は厳しいかな」
といった様子でした。

ところが、です。

2セット終了後に
トイレットブレイクを取って
戻ってきたジョコビッチは別人でした。
冗談ではなく双子の兄弟と
入れ替わったのかと思うくらいに。

まずスコアから。
1セット目 6-7 ムゼッティ
2セット目 6-7 ムゼッティ
3セット目 6-1 ジョコビッチ
4セット目 6-0 ジョコビッチ
5セット目 4-0 ジョコビッチ

冗談みたいな逆転勝ちです。

5セット目の第5ゲーム
ムゼッティは棄権しますが、
別に怪我をしたわけではありません。
試合後の彼のコメント↓。

「もう1ポイントも
取れないと思ったから」

要はメンタルのKO勝ちです。

追い詰められていたのは
ジョコビッチ(のはず)。
それが、最後は相手の心を
バキバキに折るという結末。

厳しい状況下でも、ずっと相手のスキを
探っていたんでしょうね。

今思えば、序盤は相手に
好きなように打たせて
生気を吸いとっていたのかと思うほど。

ムゼッティは3セット目を
取られた時点で、
まだ自分が優位な状況なのに、
表情がひきつっていました。

準決勝はレッドクレーの
絶対的王者ナダルを
4時間を超える歴史的大激闘の末に
降します。

これはテニスの面白さを
すべて詰め込んだような試合で、
素直に感動しました。
ちなみに私は深夜2時開始〜
終了朝6時過ぎのこの試合を、
1ポイントも見逃さずに観ていました。
(バカですよね)

4セット目、
あのフィジカルお化けのナダルが
足にきはじめて、
少しだけ諦めに近い表情を
浮かべたとき、一抹の寂しさが。
両者の年齢(34歳と35歳)を考えると
二人の上質な戦いを観れるのも
あと数回かな、と考えると
なおさらでしたね。

そして、決勝。
相手は次世代No.1候補の若手チチパス。

チチパスは絶好調。
完璧なテニスでジョコビッチを圧倒し、
2セット連取します。

さすがに今日は負けたかな…
若手とはいえ、チチパスは
ムゼッティと違い
世界ランク6位の実力者ですから。

ましてや準決勝でナダルとの
死闘を演じた後ですから
体力的にも厳しいはず。

ここで、ジョコビッチは4回戦同様、
トイレットブレイクをとります。
そして、双子の兄弟と
入れ替わって戻ってきました。

4回戦のデジャブです。

3セット目を取り返すと、
あれだけ完璧だったチチパスのテニスが
狂いだします。

ほぼこの時点で
勝負、アリ、
着信、アリ、
モハメド・アリ、
私の前髪、ナシ、
です。

大逆転優勝へとシナリオが
書き換わりました。
チチパスは完全に
ジョコビッチのペースに
巻き込まれていきます。

ジワジワと真綿で首を絞めるように
相手を追い詰めていくジョコビッチ。

そして最後は相手の戦意を奪い、
見事グランドスラム19回目の優勝。


最後に。

スポーツではありませんが、
メンタルといえば藤井聡太くん。
(なぜか彼だけ君付け)

対局中の戦術とメンタルも見事だけど、
十代にしてあの落ち着き払った
マスコミ対応。
浮ついた様子は一切なし。

感服です。
あんな十代見たことないです。
自分の十代の時を考えると
なおさらです。

ではでは。
明日は大谷先発。早起きせねば。