Column

2018年4月24日 黒電話と青春

三種の神器。
テレビ、冷蔵庫、洗濯機。

私が物心ついた時には、
猛烈に服が絡み合う二層式の洗濯機も、
図体ばかりでかくて画面は14インチしかない白黒テレビも、
放っておくと冷凍室の製氷部分にデカイ霜ができる冷蔵庫もあった。

それにもう一つ、電話ね。
「9」や「0」が多い番号を回す時は指が疲れてしまう
ダイヤル式の黒電話もあった。

昭和40年代には全てあったんだよね。
それぞれの性能は劇的に進化したけど、
洗う、見る、冷やす、通話するという役割自体は同じだから。

なんでこれほどまでに当時とライフスタイルが変わったかといえば
やっぱり携帯とコンピュータなのかな。

特にスマホ。
当時から考えればもうSFだから。
ドラえもんポケットと同レベル。

今の子たちは、ラブレターとか書くのかね。
告白も会う約束もみんなメールかラインなんだろうね。
勇気はいるけど苦労は伴わないんだろうな。
味気も風情もないしね。

私の青春時代の苦労はなんだったのかと思う。

携帯もコンピュータもない思春期。
切なく、いじらしく、甘酸っぱいドラマがいろいろあったな。

そんなドラマの第一弾。

タイトル:「黒電話と青春」
出演:私、私の家族、ひでよちゃん(仮名)

1980年代前半、1月の恐ろしく寒い日。

5時間目の授業前。
隣にはいとしのひでよちゃん。

なんの前触れもなく突然降って湧いてきた勇気と勢いで
口をついたセリフが、
「今夜電話していいかな」

「いいよ」とふたつ返事のひでよちゃん。
間違っても迷惑そうな声のトーンではない。

が、とんでもないことを言ってしまった…
と、押し寄せる後悔の波。

彼女あるいは好きな女の子に電話をかける。
中学高校時代、その度に吐き気を催すほどの緊張に襲われ、
心臓は早鐘をついた。いくつ心臓があっても足りやしない。

できるわけがない。

家にある電話は1階のキッチンに1台のみ。
隣の茶の間では、両親と姉がテレビを見ている。
どんなに声を絞っても聞こえてしまう至近距離。
家族に聞かれて冷やかされるのはゴメンだ。

もう電話しない。
そう開き直れればどんなに楽だろう。
でもしなきゃしないで、ひでよちゃんの機嫌を損ねてしまうかもしれない。

やっぱりかけよう。
まずは電話線がどこまで伸びるかだ。
とても2階の部屋までは伸びない。
階段の中段付近が限界だった。

そこに移動してから、小林明子じゃないけど、
ダイヤル回しては手を止めること数十回。
時刻は夜の9時を過ぎようとしている。

もし、ひでよちゃんのお母さんかお父さんが出たら、
「こんな時間に!」と切られてもおかしくない時間だ。

そう。
相手の両親、特に父親が出た時のことを
どうしても考えてしまう。

「ひでよさん、いますか」
「どなた? ひでよはもう寝ました。(ガチャン!)」
なんてやられたら、一生立ち直れないかもしれない。

北側にある階段は、もはや冷蔵庫。
手足は冷え切って、歯はガタガタし始め、
鼻水まで出てきた。もう凍死寸前。

一度部屋に戻り、靴下と手袋をつけた。
階段に戻り、思い切り深呼吸して、
ダイヤルに指をかけた時、
ジリリリリーン! とけたたましく鳴り響く黒電話。

「ひぃ〜!」
驚きのあまり、階段を転げ落ちそうになる私。
その時のBGMは蒲田行進曲。

茶の間から母が出てくる気配で
我に戻り、何事もなかったかのように電話に出た。

「あ、〇〇くん、ひでよです」

俺は幸せ者だー!。前のコラムに出てきたセリフだが
ここでも心の中で大絶叫。

「なかなか電話こないからさ」
「今かけようと思っていたところだった」

この後、私とひでよちゃんがどうなったかは、
想像にお任せするとして、
同世代の人なら似たような経験あるだろうね。

ではでは。

次回予告
タイトル「待ち合わせと青春」
出演:私、ひとみちゃん(仮名)