2021年4月20日
熱闘!代々木第二体育館
中三高 VS 春一番高(第十一話)
第十一話の前に。
漢字が書けません。
悲しいくらいに。
読む方は人並みだと思うけど
書く方はおそらく小学生レベル。
「急遽」とか「薔薇」とか
読めるけど書けない。
こんな人は私以外にも
たくさんいるでしょう。
そのレベルがどんどん下がってきて、
「あれ」と思ってペンが止まる漢字が
もう冷や汗レベルです。
恥ずかしくて人前でメモなんか取れない。
だってね〜
書く機会がほとんどないじゃないですか。
宅配便の伝票くらいですよ。
特にリモートが増えてからは、
画面共有だし、メモもPC上で
メモしちゃうし、
書き写し必要な書類も
スクリーショットしたり、
写真で撮って済ましちゃうし、
デザインのラフ書きもソフト使っちゃうし。
書けなくなるわけです。
最近はそんな…か・ん・じ☺︎。
というわけで、
中三高 VS 春一番高、第十一話です。
後半開始直前の円陣で桜田は言った。
「残りの20分に体力、技術、気力、執念のすべてを使い切って。そうしなければ春一番には勝てない。東京のモダンなバスケには、北国のど根性で対抗しましょう。相原こずえも、岡ひろみも、矢吹ジョーも、星飛雄馬も勝者のキーワードはみんな根性よ。思い出して。雪面での2時間ランニングにダッシュ100本、真夏のオールコートでの7時間練習。みんな、これからの20分のためにやってきたんだから」
桜田の声はうわずっていた。部員たちの目も充血している。溢れる感情、気力が抑えきれず、森の目からは大粒の涙がこぼれ
落ちていた。クールな山口でさえも、その目には鬼気迫るものがあった。
春一番高校のベンチ前も円陣が組まれた。9点のリードがあるとはいえ、いつも笑顔の絶えない春一番部員たちの表情は冴えない。自分たちの体力、中三高校のしたたかさと底力…。森田は、彼女たちの胸をよぎっている不安を拭い去る言葉を探した。しかし、言葉も戦術も思い付かず、うなずくしかなかった。
後半が始まった。
ハーフタイムで僅かながらエネルギーを回復した春一番高校の動きは、傍目から見れば極端に落ちているようには見えない。ただ、試合開始当初のキレがないことは、桜田も山口も感じていた。
しばらく一進一退が続いたが、後半開始7分に動きがあった。山口がゴールを決め、46-39と中三が7点差につめた時だった。
春一番高校の選手の一人が、ゴール下で膝に手を置いたまま一歩も動けないでいる。岡田だった。すぐさまタイムアウトを取ったが、岡田は自力でベンチに戻ることができない。両足が痙攣を起こしていた。田中と藤村が肩を貸し、岡田はその二人の肩にほぼぶら下がるような形でようやくベンチについた。
「岡田、スポーツドリンクを飲め。脱水症状を起こしているかもしれない」
岡田は、悔しさと痛みで目に涙を浮かべ、唇を噛み締めていた。既にその足元では1年生の大場が岡田の足のマッサージを行なっていた。
森田は、岡田のポジションに誰を入れるか逡巡した。控えの中では安定感がある岩崎か、スピードのある石野か、ムードメーカーの榊原か…。誰を選んでも岡田の穴を埋めるには荷が重すぎる。岡田の痙攣が治まり後半の勝負所で動けるようになるか、可能性は五分五分だろう。森田は岡田の回復に賭けた。つなぎの10分を考えたら岩崎が適役と判断した。
「岩崎、岡田のポジションに入れ」
トライアングルオフェンス、その攻撃力は半減するだろう。何よりリバンドの弱点をさらに突かれることは避けられない。残り5分まで逆転を許さずに持ち堪え、回復した岡田をコートに戻す。森田が思いつく勝利のシナリオはそれだけだった。
タイムアウトが解け、春一番ボールでプレーが再開された。その直後だった。ディフェンスを振り切ってパスを受けた清水が顔を歪めその場に蹲み込んだ。すかさずこぼれたルーズボールを中三の山口が奪い、楽々とレイアップを決めた。
今度は清水が足を吊ったようだ。
さすがに森田は焦った。3回しかないタイムアウトをここでまた使うわけにはいかない。
「石野!代われ」
森田は躊躇なく交代のカードを切った。
「みません。監督。すぐに回復します」
清水はベンチに下がりながら言ったが、顔は青ざめている。
森田は交代とともに、1年生部員に清水への水分補給と足のマッサージを命じた。岡田だけでなく清水までも…。この3年間どんなハードな練習でも二人が足に痙攣をおこしたり吊ったりすることなどなかった。蓄積疲労もあるかもしれないが、決勝戦という気持ちの高揚が身体にいつも以上の負荷を与えていたのだろう。
確かに足の吊りは回復するだろう。しかし、アドレナリンでカバーできる範囲さえも超えてしまっていると考えていた方が良い。
清水の交代で春一番高校のコート上5人全員が身長150センチ代になった。
「ここだ!」
冷静な阿久には珍しい、怒声が響き渡り、中三高校の容赦ない反撃が始まった。
つづく。