Column

2021年4月29日
熱闘!代々木第二体育館
中三高 VS 春一番高(第十二話)


第十二話の前に。

この間たまたま見たドラマで、
若手のイケメン俳優が
いじけて走り出すシーンが
ありました。

その走りを見た共演仲間の吐いた台詞が

「あいつあの顔で走り方めっちゃダサいな」

いわゆる「ギャップ」ですね。
もちろんドラマでは演出上、
わざとダサく走ったんだろうけど。

ギャップはプラスに働く時と
マイナスに働く時があるわけです。

このギャップに萌えちゃう人も
いるかも知れないけど
出来そうで出来ない系のギャップは
基本マイナスに振れますよね。

あまり見た目の印象で期待値上げて
結果が出ないと後がキツいもの。

第一印象、先入観からのギャップ…
これは仕事として考えると
とても奥が深いので別の機会に。

顔もスタイルも抜群の小栗旬くんが
走り出したら欽ちゃん走り…

オグリギャップ♡🐴♡🐴

というわけで、
中三高 VS 春一番高、第十二話です。


タイムアウト明け、春一番高校ボールでプレーが再開された。
交代で入った岩崎と石野は、明らかに地に足がついていない。動きに緩急もなく効果的な攻撃につながらない。
伊藤、田中の攻撃のイメージと噛み合っていないのは明らかだ。攻めあぐねた結果、24秒バイオレーション(攻撃側はマイボール24以内にシュートを打たないと相手ボールになる)で、ボールは中三高校に渡った。

中三の森は慌てなかった。センターの倉田にパスを通す展開を軸に攻めれば、得点確率は自ずと上がる。オフェンスリバウンドの奪取も容易いだろう。無理に3ポイントなど狙わず、確実に点数を重ねていく。それは言わずとも中三メンバー全員が寸分違わぬ思いとして共有された。

イメージ通り中三は倉田のゴール下から、そして、桜田のリバウンド奪取からとイージーシュートを重ねた。
一方、春一番高校は、藤村の個人技でねじ込んだシュート以外は、3分間得点の入らない時間帯が続いた。

後半11分、40-40。中三高校はついに春一番高校を捉えた。

さらに倉田がファールでもらったフリースローをきっちり2本決め40-42。
春一番の焦りから生まれたパスミスから森がレイアップを決めて連続得点。40-44。
その後、春一番伊藤の強引なカットインシュートが相手ファールをもらいフリースローを2本決めて42-44。

ここで、春一番高校森田は、あらたに交代のカード切った。後半13分を過ぎだった。

主力の伊藤、田中、藤村をさげ、榊原、高田、大場を入れた。
主力3人は到底納得がいかないという表情でベンチに下がった。

会場がどよめいた。森田は勝負を投げたのか。点差が大きく開き、勝敗が決した状況ではない。1、2年生に経験を積ませるにはあまりにも早い上に荷が重すぎる場面だった。
春一番高校は主力が下がり、全員控えメンバーとなった。

「トップギャランだっ!」

森田が叫んだ。
トップギャランとはフランス語で勇ましいという意味のギャランに、頂のトップをつけた造語である。春一番高校の夏合宿で、1年生部員対象にスタミナづくりの一環として行なっている超絶ハードなディフェンス練習である。勇ましい集団としてトップを目指すという想いで森田がトップギャランと命名した。
1-3-1のオールコートのプレスディフェンスで、全てのボールに対しダブルチームで激しく当たり、相手のパスコースを限定させてカットを狙うものである。これを10分間3セット行なう。この練習のキツさに耐えかね、1年生部員の2/3が退部するという。言い換えれば、このトップギャランに耐えた者だけが春一番高校部員として認められるということでもある。

この戦術は、どんなに鍛えていても試合では体力的に3分ほどしか持たない。 森田は残り7分ある段階で賭けに出た。

体力的にはフレッシュな5人が、中三高校に激しく襲いかかってきた。高度な戦術に戸惑うこともなく「とにかく激しくディフェンスで当たるのみ」という開き直りもプラスに働いた。
バックコートでボールを持った中三の森に二人がダブルチームに行き、ドリブルコースとパスコースを消しにかかった。予期せぬダブルチームに森は完全に動きを止められた。5秒以内にパスを出さなければタイムバイオレーションを取られる。僅かに視界に入った山口にパスを出したところ、春一番の石野が狙っていた。見事にパスカットし、フリーでレイアップを決めた。

次のプレーでもゴール下からのファーストパスを受けた山口が捕まった。二人に囲まれながら大きなピボットでパスコースを探したが、二人のファールすれすれの当たりの強さに思わず軸足が動き、トラベリングの反則を取られた。 春一番高校は中三高校が動揺して足が止まっている隙を逃さず、すぐさまゴール下にいたの高田にパスを通し易々とシュートを決めた。

春一番高校が46-44と再逆転。中三高校に傾いてた流れは瞬く間に春一番高校に移った。
ベンチでは痙攣とこむら返りでさがっていた清水と岡田がアップを開始し、回復をアピールしていた。


つづく。